池田
 長沼ファームさんの概要、牧場の規模や牛群構成などを教えて頂いて宜しいですか。

森崎
 長沼ファームは、長沼本場と安平分場がありまして、安平分場は繁殖基地、長沼本場が肥育基地になっています。安平分場の方には、親牛がだいたい450から500 頭いて子牛の生産をし、3ヶ月から4ヶ月位の牛を本場に移動して、肥育28ヶ月を中心に馬追和牛として出荷しています。
 全頭で、だいたい1,200頭ぐらいの牧場です。

池田
 今回はvetellを導入頂いて、そのきっかけとか、決め手になったことは何かございますか。

森崎
 今回は、取引させて頂いている農林中央金庫様の紹介があって、VETELL社のことを色々教えて頂き、うちの「見える化になってない部分」が、ちゃんと「見える化になってきた」に近づけられるんじゃないかなっていうことで、今回導入させて頂こうということでやっています。

池田
 具体的に、その見える化出来なかったところが出来るかなと、決め手になったポイント、そしてどこをもって「見える化出来るかな」と思われましたか。

森崎
 特に繁殖事業の方になってくるんですけども、いろいろ書類等は残ってますが、種付け回数にしても、その牛が本当に子牛を生むまでにどのくらいの経費がかかってきているのかというのが、実際の本当の意味での数字というのがなかなか見えてない部分があったりとか。そういう部分が一目瞭然に見えてくるような状況になるのと、融資してくださっている銀行関係にも、ちゃんと説明の効くような諸資料にまとまったものになるというのが、1番の大きいところだと思いますね。

池田
 今まで牧場さんで取られたデータでは、空胎日数だとか種付け回数そのものは分かっていたかと思うのですが、そこのバックグラウンドにある経費のところが結構分りにくかったということでしょうか。

森崎
 そうですね。
 例えば、うちは獣医師に委託して種付け等を全部やってもらっているんですけども、ちょっと付ける周期が遅れていたとか、追い付けしたとか、結局それがじゃあいくらの種が何回やって牛になったのか、それがちゃんと経費として加算され、ちゃんとその牛のそもそもの価値というものが数字として見えてくるというのは、非常に魅力もあるし、経営にもどんどんプラスになって行くし、是正する事とか色んな課題を見つけるのにも、そういう数字が見えた方が。
 「経費ばっかりかけてすごく良い牛になったけども、高い牛だよね」と言うようなことが多々あると思うんですね。

池田
 お金がしっかりと見えてこないと、やはり経営としては難しいところがあると感じられていますか。

森崎
 今は餌代とか燃料代とか、色んな経費どんどん上がってきている状況(コストアップ)で、「いかにコストを抑えて良いものを作っていくか」ということになってくると思う。どんぶり勘定で見えていないことも、「こうだから、やってみよう!」とか、そういうことではもう、今後の牧場経営はやっていけないのかなって。
 「いいからやってみな!」で勧められてやっているものって結構あると思うんですけど、「果たしてこの会社にとって本当にプラスなの?」という部分とかが、多分vetellを導入することによって色んなものが見えてきて、本当に必要なものだけを残していけるような、それのプラスになって行くのかなとは思っていますね。

池田
 しかもその費用対効果っていうところが、はっきり見えてくるだろうと。しかもvetellの魅力としては、それが牧場の中だけではなくて、ある程度パートナーとして伴走して頂きたい外部の方にもそういう数値が見えてくるというところは、どのようにお考えですか。

森崎
 ある程度の取引先とも共有して情報が見られるっていうところで、銀行関係と融資して頂いているところにそういう(数値化された)ものもちゃんと見せるということで、今後の信用に繋がり、次の融資に繋がってくるのかなっていうのは感じてますね。

池田
 なおかつ、現場のスタッフさんでも入力をしながら、必要に応じて(権限の設定にもよりますけども)そこまで(数字を)見る。つまり現場のスタッフさんでも、ある程度牛の経費のところとか経営感覚とか一頭にいくらかかっているのか。社長も仰っていたように、「種付けしたけども、それいくらかかっているよね」とか「前のいくら?もったい無かったよね」というところが、今までが見えにくかったということでしょうか。

森崎
 そうですね。
 で、どうしても現場になると牛が大好きなので、(牛を)良くするために「これやってみよう」「あれやってみよう」「こうした方が良い」、じゃあ「いくら(経費が)掛かってるの」までは考えない、牛のためにしか考えない。ただそれがこのvetellで見られるようになってきて、(アクセス)権限がありますけども、ある程度の「ちょっとやり過ぎだよね」「ここまでやらなくても良くなるよね」っていうところを、現場の人間も気づいてくれるようなきっかけになればいいなと思ってます。

池田
 主に現場で利用している部門とか、日々の使い方は、どのようにされてますか。

森崎
 今利用して(更に)今後の流れとして考えているのは、まず獣医師も共有。例えば発情がきた牛がいた時に、その牛の情報をすぐ見られる。で、「過去の履歴でかなり苦戦してる牛だから、何を気をつけなきゃいけない」という注意点をすぐ分かるような状況になっていけば、無駄な事はしなくて良くなるのかなと言うのは非常に(有効だと)感じてますね。
 あとは(精子・受精卵の)在庫管理もしっかり見えてくるので、「今この牛が発情きました、この種付けよう」ってなった時に、在庫確認で有無がすぐに分かるので、「では今ある在庫でこれをこの牛に何を付けようか」と。まあ今までは「どうしよう、どうしよう」っていう感じだったんだけども、現場の人間としても(状況を)予測しながら「この在庫があるので、これ使ってください」という流れにはなってくるのかなと感じてますね。